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人は何によって生きるのか、という問い


by nanpuhtongue

目から鱗が落ちる

 数日前のこと。電話で予約を入れていた犬の女性インストラクターが、初めて我が家を訪問した。屋内で飼っている我が家の愛犬―トイプードルーとの接し方について私たち家族の相談にのるためである。このような相談をしようと思い立ったのは、今年の正月以降、どうも家族に対する咬み癖、うなり癖がついたのではないかと心配したからである。
 まずインストラクターは我が家の愛犬を見て、触れて、その性格、家族との関係、犬の居心地のよさを瞬時に判断されているようであった。彼女の訥々とした話し方が押し付けがましくないことにまず好感を持った。そして犬の基本的習性から具体的な接し方、我が家の愛犬の、家という空間内での居心地の良さにいたるまで、こちらが納得できるまで彼女は丁寧にかみ砕いて説明してくださった。
 家族三人が受けた愛犬との接し方についてのカウンセリングのなかで、特に印象的で、目から鱗が落ちる思いをした点を二つ記しておく。
 一つは、犬は本来夜行性であるため、昼間はのんびりゆっくり好きな場所で眠りたい、くつろぎたいという欲求を持っているという指摘である。この指摘を受けたとき、私たちには思い当たるふしがあった。正月に大勢の人間が我が家に集まった。愛犬は「可愛がられ」、一緒に遊び、くたびれて一休みしているところで、自分の身体に人の手が触れたところで、うなり声をあげ、噛み付こうとした。それ以後も誰かに抱かれ、膝の上でうとうとしているているときに、頭やあごを撫でようとして人の手が頭に近づいてきたところで人間が反撃にあっている。犬にとってはくつろいでいるところに人間の手の先が延びてくるくることは恐怖と感じられるので、反射的に手(特定の人間ではなくて)を攻撃しただけの話なのだ。納得がいった。
 二つ目は、たいていの犬の飼い主が抱いているあの思い込み、つまり飼い犬はその家族のメンバーを序列づけ、同時に自らをそのなかに位置づけている、という思い込みである。自分にとっての「主人」は誰か、自分より下の序列にくるものは誰かを犬自身が決めているという「常識」がそれである。
 私も実は永年そう思い込んで疑ったことがない。ペットを飼育する経験が豊富な人も、流布しているペットの買い方の本の著者たちも、そのほとんどが異口同音にこの常識を疑う余地がないものとして語ってきた。犬が主人を独占しようとして、嫉妬心から第三者を攻撃する、という解釈が流布しているが、これも間違いで、人間が勝手に人間の間の三角関係の図式を単純に投影しているだけの話だというのだ。
 犬はもっと単純。犬は人間がどのような姿勢で犬との間合いをとるかで、自分に対する攻撃の姿勢かどうかを即座に判断するというのである。犬にとって正面の位置から人間にじっと見つめられるのは恐怖であり、攻撃の姿勢を本能的に犬にとらせるもとになる。犬とは正面から向き合わないことが犬と仲良く暮らすコツだそうだ。そして何よりも、可愛くても犬にかまいすぎないことが肝腎とのこと。自分だけで好きに自由にしたいときにかまわれると、犬には迷惑千万、ストレスのもとになり、犬は疲れてしまう。

 自らも近年、新しい「犬観」にもとづく研修を集中的に受けてきて、インストラクターとしてはまだ駆け出しだと謙遜されていたけれど、説得力がある。というのも、その後我が家族は、インストラクターの指摘が図星だと納得する場面に出くわし、なるほどその通りだと思うことがたびたびあったからである。
 愛犬が自分で考えることを尊重し、愛犬を人間の都合に合わせて人間の考えの鋳型にはめ込まず、愛犬にとってストレスにならないような接し方をすることが、私たち家族にとってもストレスにならず、犬と人間が家のなかで和やかな雰囲気のうちにつきあっていける道につながるのだということを学んだ。小さな子どもと親が接する際にも応用できる考え方だと思う。
 

 
 


 
 
by nanpuhtongue | 2013-03-16 18:35

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